今週は県立高校の入試があります。


島内には高校がないため、地元の中学校が会場となりそこへ島の他の中学校から受験生が集まって試験をします。
島での受験勉強は本当に大変。なんといっても塾がありません。

進学校に進みたい子に至っては、お母さんに聞いても「お母さんも社会苦手だったからな~」とか、学校の先生に聞いても「この問題は難しすぎるからわかる人に聞いて」とか言われてしまう受験生。そして人数の少ない学校では陸上大会があれば全員陸上の選手、駅伝大会があれば全員駅伝の選手という使命があり、本格的に勉強のみに専念できるのはラスト3ヶ月!そんな過酷な環境の中でみんな本当に頑張るのです。火事場の馬鹿力です。

私の娘の受験の時の話です。中学3年生になり志望校も決まらぬまま何となく県立高校の模試は受けているのですが、石垣島にある高校の判定結果はB。那覇にある高校の判定結果はD。まあ、石垣の高校に進むだろう、それならなんとかなりそうだと親は楽観的に考えていました。

しかし、娘は何を思ったのか、「判定結果Dの本島の高校に進む!なぜなら部活が強いから!」と夢と希望に燃え始めま した。友達の中には夏休みに内地のおばあちゃんの家に泊まり込み塾の夏期講習に通う子も出てきました。毎日部活に陸上に運動ばかりに明け暮れているわが娘。

そもそも学校の成績はいつも5の中に4が何個か混じっているという感じ。そんなに成績も悪いほうではないと思っていたので今まで勉強しなさい!とは言ったことがありませんでした。しかし、この模試の判定結果。勉強しなさい!って今から言ってはたして間に合うのだろうか?とはいいつつ私たちの仕事も夏は大忙し。構うことをせず夏は過ぎていきました。

そして9月。竹富町のICT事業で塾のない離島の子供たちにテレビ電話で勉強を教える無料塾が始まったのです。もう行くしかありません。内容の良し悪しはわかりませんが、塾はここしかないのです。そしてなんといっても無料なのです。本当にありがたいです。

そこで、一番最初にまず全国模試を受けました。その結果、なんと・・・石垣の高校はB。のまま変わりはないのですが、沖縄本島の高校はE判定!!下がっています!夏も終わり時間だけが過ぎ、判定結果は悪くなっているのです。もう運動ばかりやって娘の脳みそは筋肉になってしまったんじゃ、と思い私は石垣の高校に進んだらどうか?と説得しなくてはと考えました。しかし、なぜか更に燃える娘。「絶対に沖縄本島へ行く!」と決意を固めていました。それならちゃんと受験勉強をさせなくては!と私も判定結果Eの現実に向き合うことになりました。

ここで春の沖縄県の模試、最近受けた全国模試を見比べてびっくり。全国模試での偏差値と沖縄県模試での偏差値の基準値が5くらい違うのです。

例えば沖縄県の模試の時に偏差値58と書いてあった学校は全国共通の偏差値でいうと53ということです。そんな独自の基準で判定していたなんて・・・。沖縄県の子供たちが自分の偏差値があまりにも低すぎてショックを受けない ように?とか沖縄県民の学習事情に思いを馳せつつ、全国模試では県のものより判定が厳しいことを知り、娘の学力は悪くなったわけではなく、更に良くなったわけでもないということでした。

そしてテレビ電話塾に通いながらも、相変わらず運動に明け暮れながら3か月が過ぎ最後の大会も終わったところで全国 模試です。本島の学校の判定結果はD。すごい!あがってるじゃん!と励ましたものの、受験まで残り3カ月。
それでも判定結果Dの高校を目指す娘。あせるのは母です。

離島からの県立高校受験は、石垣島には私立の高校がない為、滑り止めを受けるというよりは安全に合格県内の県立高校を目指す、ということが多いようで、中学校の先生にも「部活だって、県で一番強い部活に入ったら毎日ボール拾いしかできないはずよ~。石垣の高校に行った方がいいはずよ ~。」となんども説得されるのですが、頑なに「強い部活に入りたいから本島に行く!」と言い続ける娘を見て、先生に「こんだけやりたいといっているんだからやらせてみます。」と宣言をしてしまったのでより一層焦るわけです。

そこで進学校を目指している子の家に石垣の塾から週一回個人授業をしに来てくれている先生がいたので便乗して授業を受けさせてもらい、夏は仕事が忙しくて出来ないが冬なら家庭教師をしてあげるという元教師の方に教え
てもらいながら、残りの3か月、運動は一切せず勉強だけを毎日やったのです。そして、受験まであと一か月というところで最後の模試です。そこで判定結果はC!う~ん微妙!たしかにあがっているけど残り時間が少ない。

しかし娘本人は「大丈夫だよ。あと一か月あるし~。」とのんきなのか前向きなのか。とりあえず、「強い部活に入りたい」という気持ちだけは本物の様で、その夢のために勉強をがんばれる。その精神力は脳みそが筋肉になるほど明け暮れた毎日の運動のおかげなんだなとアスリートの強さに感心しました。

そして、入試当日。試験が終わり自己採点をした娘は、「もしかしたらやばいかも。」と初めて弱音を吐き、
私は二次募集がありそうな学校の情報収集に必死になりました。学校はどこでも良いからとりあえず高校生になってくれ! と。

合格発表の日。なんと合格していました。6か月前まではE判定。まわりの大人に何を言われようともあきらめずに自分を信じてやってみる。子供は柔軟にいくらでも伸びるのですね。大人が危ないよとか、無理だよ、と決めつけてやらせなければ子供の能力も伸びないのです。子供の能力を引き出せる環境を作ること、とても大切な大人の役目だなと実感しました。

合格発表の日の夜は各家庭でお祝いをして、先生や地域の人たちが各家庭を回ります。お父さんはうれしさのあまり飲みすぎて記憶をなくしたのは言うまでもありません。

今年も皆のお祝いに行けますように。