西表島に住んでいるスティーブは、2018年3月から副業としてWebライターをやっている。それまでまとまった文章を書いた経験はなかったし、誰が素人の書いた記事にお金を払うのだろう?と疑問だった。もしかして詐欺?と思ったりもした。

でも、騙されたと思って1年間やってみて、スキルが上がっていけばそれなりに報酬がもらえるということがわかった。

この1年間に起きたことを書いてみよう。

 

竹富町移住プロジェクト「ぱいぬしまネクスト」に参加

スティーブがWebライティングを始めたきっかけは、竹富町移住プロジェクト「ぱいぬしまネクスト」への参加がきっかけだ。

ぱいぬしまネクストは竹富町が複数の企業に業務委託しているが、(株)ブルー・オーシャン沖縄が現場で中心となって動いている。

ぱいぬしまネクストでは、これまで移住者定着支援を目的として2つのプロジェクトに挑んできた。

  • 2015年度 コールセンター在宅オペレーター養成
  • 2016年度 Webデザイナー養成

いずれも移住者を中心に意欲的に取り組んだが、離島ならではの特殊な条件などもあって定着するには至っていない。

スティーブは、2016年のWebデザイン講座からぱいぬしまネクストに参加した。約20名の移住者がHTMLプログラミングやPhotoshopの使い方をオンラインで受講。Webデザインの基礎は習得できたが、実際に仕事を受注するハードルは高かった。

 

ライティング講座を受講

2017年度の後半、ぱいぬしまネクストがWebライター養成を目的としてライティング講座を企画。今回もオンライン講座だが、日本を代表するクラウドソーシングサイト「クラウドワークス」の田中さんが講師を努めてくれた。移住者を中心に約20名が全4回の講座を受講。期間は短いがとても洗練された講義で、初心者のスティーブでも文章の書き方がなんとなくわかった。

 

ライターの仕事を始める

ライティング講座を終えて、実際にライターとして仕事をするようになった。スティーブは主に2通りのルートでライティングの仕事を受注している。

一つは、クラウドソーシングサイト「クラウドワークス」に登録し、個人で仕事を受注している。

もう一方は、ぱいぬしまネクストで仕事を一括受注して、チームで仕事を分担している。

この2つの仕事の割合は半分半分といったところ。

今回の記事では、ぱいぬしまネクストの仕事のことを中心に、クラウドソーシングと比較しながら書いてみる。

 

ぱいぬしまネクストチームでWebライティング

Webライティングは、1:1のクラウドソーシングがメインマーケットだ。しかし僕たちは初心者の集まりなので、プロジェクト参加者でチームを組んで1:Nでライティング業務を受注している。

マネージャーのY氏(ブルー・オーシャン沖縄)がクライアント企業からまとめて記事を受注し、僕らライターに案件を割り振る。書き終わった記事をY氏が検収し、まとめてクライアント企業に納品するという方式だ。

ライターとマネージャーの連絡にはチャットアプリ「Chatwork」を使い、グループチャットやプライベートチャットで業務連絡やファイル納品を行っている。

1年間この方式を試してみて、ライターのスティーブが感じたメリットとデメリットは以下の通りだ。

 

チームライティングのメリット

スケジュール管理が気楽

毎月第1週に案件を決め、最終週に納品するというサイクルなのだが、万が一忙しくて手を付けられなくなってしまったとしても、マネージャーや他のメンバーが助けてくれるかもという気楽さがある。

また、月々の仕事量をライターの本業・生活に合わせて自由に調整できるのも嬉しいメリットだ。

マネージャーが推敲してくれる

僕らはライティング初心者なので、一発でクライアントのOKを貰える記事を書くのは難しい。僕らが書いた記事を経験豊富なマネージャーが推敲して納品してくれるので、とても助かる。

マネージャーからのフィードバックがある

納品した記事に対してマネージャーから修正の指示があるので、こういう部分を直せばいいのだなというフィードバックになる。また、マネージャーが推敲してくれた後の記事も公開されるので、勉強になりスキルアップにも繋がる。

病気になっても大丈夫

以前このブログでも書いたが、スティーブは2018年10月にレプトスピラという感染症に倒れ、1週間高熱にうなされ続けた。実はこのときも記事を受注していたのだが、とても執筆できる状態ではなかったので、マネージャーとメンバーが代わりに記事を書いてくれてとても助かった。

 

チームライティングのデメリット

クライアントの顔が見えない

クライアントとの連絡は、全てマネージャーのY氏が行っている。そうすると、ライターからはクライアントがどんな人なのか全くわからない。

クラウドソーシングの場合だと、ライターがクライアントと直接取引をする。直接会ったり電話をしたりすることはないが、メッセージの口調(文体)やレスポンスの早さ、対応などでお互いの人柄や思考、感情までもがわかってくるので、仕事がスムーズに進むようになっていく。

クライアントの顔が見えてくると、こういう記事を期待しているのだなというのがわかってきて、ライターも期待に沿った記事を書けるようになるのだ。

しかし、今回のクライアントとは1年近く間接的に取引してきたが、いまだにどんな相手なのかよくわからない。

2重のダメ出し

ライターが書いた記事がいまいちだった場合、まずマネージャーからダメ出しがでる。そこで書き直して納品しても、さらにクライアントからダメ出しをくらうこともある。1回も修正がない場合もあれば、2回修正が必要な場合もあるのだ。

クラウドソーシングでもクライアントの修正指示に対して疑問に思うことはあるのだが、あまりにも理不尽でない限りは仕事として割り切って従うほかない。あくまでもWebライティングは僕の作品ではなく、クライアント引いては読者が望む記事なのである。

しかし、クライアント納品前の記事に対してマネージャーからダメ出しをもらうと、「なんでだめなの?」と思ってしまうものだ。マネージャーが記事の品質を一定に保つためには必要なことなのだが、ライターからすると発注者ではないマネージャーからのダメ出しに納得し難い感情を持ってしまいがちだ。

実際、今回のプロジェクトではこのことでライターの一人がマネージャーに対して憤慨し、グループチャットが炎上するという出来事があった。結局、そのライターはプロジェクトから離脱してしまった。

自立するのに時間がかかる

今回のプロジェクトでは、クライアントとの面倒なやりとりを全てマネージャーが引き受けてくれている。しかし、やがてライターがクラウドソーシングで自立しようと思ったら、自分でクライアントと交渉していくことになる。自立するためには、クライアントとのやりとりを経験して学ぶ必要があるのだ。

また、クラウドソーシングサイトではライターの受注実績数と評価が蓄積され、クライアントが仕事を発注する際の基準となる。署名記事はポートフォリオとなり、そこから次の仕事へと繋がっていく。

しかし、今回の方式だとライターの実績や評価、ポートフォリオが貯まらないので、ライターは実績があるにも関わらずクラウドソーシングサイトではゼロからスタートしなければならない。

 

離島でWebライテイングはあり?なし?

チームでライティングをしていくのか、個人でクラウドソーシングに取り組むのかは個人の好み次第だろう。

それでは、総合的にみて離島でWebライティングはありなのか、なしなのか。離島でWebライティングのメリットとデメリットを今回の経験から考えてみた。

 

離島でWebライティングのメリット

閑散期を有効利用

竹富町の住民は、観光業か農業に携わる人がほとんどだ。どちらの仕事も繁忙期と閑散期があり、閑散期に収入と雇用が減ってしまうのが昔からのジレンマだった。

しかし、島外の仕事をWebで受注できるライティングなら、閑散期の空いた時間を有効活用できるのである。

実際スティーブも観光業をしているので、冬期は閑散としている。そこで冬期はライティングの仕事量を増やすように調整している。

スキマ時間を有効利用

離島暮らしは、けっこう時間の余裕がある。残業をするような仕事も少ないので、夜はすることもなくテレビを見ていたり、お酒を飲んでいたりという過ごし方も多いのではないだろうか。

Webライティングは、そんなスキマ時間で仕事ができるのがよいところだ。

全国共通の報酬

沖縄県の最低賃金は時給762円(2018年度)で全国最低クラスだ。東京の985円より223円も低い。8時間働くと1,784円も差がついてしまう。オーマイゴット。

しかし、クラウドソーシングでWebライティングを受注すれば、報酬は全国共通だ。離島にいながら、東京のライターと全く同じ報酬を貰えるのはなんだか嬉しい。

 

離島でWebライティングのデメリット

ネット回線が不安定

スティーブの住む西表島西部地区は、いまだにADSL回線しかない。とっても遅いし、大雨が降るとフリーズすることもある。

Webライティングでは、ネット上で情報を調べることが多い。また、フリー画像サイトから使用する写真を選んで使うこともよくある。

テキストのアップロード程度ならさほど時間はかからないのだが、Webリサーチや画像のダウンロードに時間を取られてしまいもったいないなと感じている。

近々光回線がやってくるとの噂があるが、早く実現してくれると助かる。

ひきこもる

都会ならスターバックスやおしゃれなカフェで仕事をするのだろうが、離島にはノマドワーカー向けのカフェはほとんど存在しない。

ネットが繋がる自宅で仕事せざるを得ないので、どうしても自宅に引きこもりがちになってしまうのだ。

スティーブは本業が外仕事なのでまだよいが、離島でライターを本業にするならいろいろ工夫が必要だと思う。

不審に思われる

離島では、だいたい誰がどんな仕事をしているかみんなわかっている。話したことがない人でも、風貌でだいたいわかるものだ。

しかし、自宅でパソコンに向かって仕事するWebライターは仕事で島民と接することがないので、「あのひとは何をやっているのだろう」と不審に思われがちだ。

説明しても、理解してもらうのが難しいという現実もある。

 

離島でWebライターをやってみよう

1年間離島でWebライターをやってみて、慣れてくればアルバイトの時給程度の報酬は貰えるということがわかった。ノーリスクで始められ、本業や生活との調整も自由自在なので、まずはスキマ時間を使ってのお小遣い稼ぎから気軽に始めてみるのがおすすめだ。