スティーブは、ついにレプトスピラ症という病に倒れた。

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レプトスピラは、ネズミが肝臓に保菌し尿に排菌する細菌で、ネズミの尿が川の水に混ざり、川に入った人間の傷口や粘膜などから感染する。西表島では、川に毎日入るカヌーガイドが年間10人ほど感染するやっかいな感染症だ。スティーブは大丈夫だろうとたかをくくっていたのだが、思いがけず感染してしまったのだ。

 

その日は天候もよく、気持ちの良いツアーを終えて帰宅。夕食を食べているときに体調が悪いことに気が付いた。風邪かな?と思い、翌日に備えて早めに寝るも、身体がダルくてほとんど眠れず。翌朝になって体温を測ってみると、38.5度に上がっていた。全身の倦怠感と悪寒、節々の痛みがどんどん増してくる。

 

これはインフルエンザかレプトスピラか、と覚悟したが、あいにくその日は土曜日で診療所の休診日。とりあえず仕事は休んで様子を見ることにする。それから24時間、症状は改善するどころか悪くなるばかり。翌日曜日の朝になってこれはもう耐えられないという精神状態となり、119番に電話する。

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西表島で夜間や休日に診療所を受診したい場合は、まず119番に電話して相談する必要がある。ちなみに消防指令センターは沖縄本島の嘉手納町にある。症状を説明し、診療所を受診したいことを伝えると、司令員が西表島の診療所にすぐに連絡を入れてくれ、受診の許可をもらった。

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診療所までは家から車で15分ほどの距離。なんとか起きあがれるといった状態で診療所に連れて行ってもらう。まずは医師に診察してもらい、インフルエンザの検査をする。これは人生で3度目だが、あいかわらず鼻のなかをぐりぐりされて痛かった。15分ほどでインフルエンザ検査の結果が出て、陰性。これでレプトスピラ症の疑いがぐんと強くなった。続いてレプトスピラを検査するための血液採取を行う。しかし、この結果がわかるまでは1週間を要するとのこと。

 

医師の診断としては、患者の行動(カヌーガイド)と症状から、レプトスピラ症の疑いが強い。治療として、①石垣島にある県立八重山病院に入院して抗菌剤を点滴する②診療所で抗菌薬を処方してもらい、自宅で治療する、の選択を求められた。

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入院したほうがなにかと安心かとは思ったが、その日はあいにく北風が強くて上原港が欠航していた。そうすると、大原港まで車で1時間、さらに石垣島まで船で1時間の長旅を起き上がるのがやっとの状態で乗り切らなればならない。それはちょっとしんどいと思い、自宅での治療を選択することに。

 

それからの5日間は地獄の日々となった。解熱剤を飲みながらも38~39度の高熱が続き、抗菌薬を飲むたびに殺菌作用で体中に激しい悪寒が走る。水分は取れるが、食べ物を口にする気にはならない。熱にうなされ、出口のない悪夢を見続ける。これはもうだめかなと、精神的にもかなり打ちのめされた。

 

1週間がたち、ようやく熱が引いた。ああ、やっと細菌との戦いが終わったんだ。1週間の闘病で体重が3kg落ち、うまく言えないが体内のバランスも崩れてしまった。今はリハビリというか、少しずつ元の身体に戻しているところ。

 

血液検査の結果レプトスピラ症が確定し、今回感染した型のレプトスピラに対する免疫は獲得したようだが、別の型のレプトスピラに効果があるかは不明だそうだ。もう二度と感染したくないが。レプトスピラ症の予防薬もあり、シーズン中は服用しているガイドも多い。来シーズンはスティーブも服用しようかな。

 

しかし、細菌ってなんのために人間に感染して暴れるのだろう?って考えてみたけど、きっと、意味なんかないんだろうね。人間と一緒で。